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カテゴリー「アメリカ大統領選」の投稿

2008年2月23日 (土)

100万回コール

オバマが民主党の指名候補になるだろうことは、大統領選挙にあまり関心のない方でも、すでに感覚的に分かっている。飲み屋の席でも「彼で決まりだよ」というセリフを聴いた。

ヒラリーとオバマしかいないのだから、「二人のどちらか」と問われれば、流れとしては「オバマ」が外さない答えである。

私はいちおうこの分野の「プロ」なので、この状況下でヒラリーの選対がどういう戦術を打ってくるかにおおいに興味がある。そうしていると先週、ヒラリーの選対からEメールがきて、電話勧誘を強化するという。電話勧誘は、戸別訪問と合わせて数をこなせばそれなりに数字があがる古典的な戦術だ。

Eメールには目標100万回!と謳われていた。もちろんコールセンターを設置して、ボランティアを中心に、これから予備選が行われる州の有権者に電話をかけまくる。すると1週間もたたずに目標が達成され、2月23日現在、142万回という数字をだした。

ただ、全米レベルでオバマとヒラリーのどちらを支持しますかとの世論調査では、いまだにギャラップ調査で45%対44%でヒラリーがリードしている。フォックスニュースの調査では両者とも44%で互角だ。だが、それがどれだけの票につながるかは別問題だ。

3月4日のミニチューズデーでは、大票田のテキサスとオハイオで、ヒラリーがこれまで確実にリードを保っていたが、テキサスはオバマにひっくり返されそうである。オハイオもわからない。となると、ヒラリーにもう勝ち目はない。

それではオバマがいつ2025というマジックナンバー(代議員の過半数)に達するのだろうか。アメリカの選挙のプロたちも代議員数の計算を何通りもしているだろうが、私の計算では、オバマが残りすべての予備選州で60%の勝率で全勝しても、2025には足りない(計算にはスーパーディリゲーツが含まれない)。

ヒラリーが「ヤーメタ」といって辞退すれば別だが、彼女が6月3日まで戦い抜くと、一般代議員数では勝敗がつかない。あとはスーパーディリゲーツがどう票をとうじるかだ。スーパーディリゲーツ数は2月23日現在、ヒラリー234、オバマ161(CNNの算出)で、ここまで党関係者は「重鎮」であるヒラリーに一票をいれる人が多かった。

今後はオバマに票が集中するだろう。意を決めかねている400人のスーパーディリゲーツの7割が、今後2カ月間でオバマに決めると、5月下旬に決まる可能性がある。

今度はヒラリーの悲嘆の涙が見られるのだろうか。(敬称略)

2008年2月14日 (木)

オバマ・オン・ザ・ステージ

まさに圧巻だった。

オバマの演説である。2004年8月、ボストンのフリートセンターという会場で行われた民主党全国大会の記者席で、オバマの演説を初めて聴いて鳥肌がたったことは当時のホームページ(急がばワシントン)に書いた。

オバマの演説は今、さらに磨きがかかっている。2月8日、ワシントン州シアトルのキーアリーナという会場にはオバマの話を聴くために約2万人が集まった。数千人は会場に入りきれなかったという。いまは日本にいるのでナマの演説を聴くことはできないが、「ユーチューブ」がある。

それは「オバマ・オン・ザ・ステージ」といえるショーだった。不覚にも鳥肌がたち、涙がでそうになった。その迫力は日本の政治家にはないものである。過去4回の大統領選挙をニューハンプシャー州予備選から本選挙まで取材しているが、2万人の聴衆があつまった話はきかない。ヒラリーは2000人規模の会場を満席にできないでいる。

若者がみずからの意志で政治家の演説を聴きにいくのである。人通りの多い駅前を選んで話をする日本の政治家とは根本的にちがう。そこでは政策の詳細を聴きに行く人はいない。分かりやすい表現と区切りのいい文脈で話をするように訓練されたオバマは、将来へのビジョンとメッセージを語るだけである。

歌手や俳優というよりも新興宗教の教祖に近い空気感がある。「政治は宗教」と単純な図式では語れないが、一人の候補を信じるか信じないかという点では似ていなくもない。国民の心の掌握術を会得しているので、演説という点でオバマはヒラリーの比ではない。

日米で机上論をのべる識者は、選挙戦を実際に取材していないのでこの空気を読めていない。予備選の段階で、すでに有権者が政策のよしあしで判断すると考えている。キーアリーナに足を運んだ2万人に話を訊いてみるといい。彼らはオバマを「観にきた」のである。その点で、彼はショーの主役である。

私は毎月、ある勉強会に顔をだしている。衆議院議員を囲んだ会だ。議員がオバマの演説をナマで聴きたいという。日本の政治家で若者を1万人も惹きつけられる人はいないからだ。多くの人が政治に興味を示さないのは、演説の名手が国会にいないからかもしれない。

ヒラリーの演説はワシントンで幾度となく聴いたが、「頭脳明晰な人」という印象だけが残って、一票をどうしても投じたいとは思わなかった。ヒラリーの選対は1月末まで磐石の態勢でオバマと互角のレースを展開したが、今ではヒビが入り、中からガスが漏れている。

個人的な思い入れはないが、私はヒラリーの選対の組織力を買っていた。ヒラリーが戦いつづけるならば5月まで決着はつかないだろうが、3月4日のミニチューズデーの結果次第でヒラリー撤退というニュースが聞こえてくる可能性もある。予備選の展開はいつも早いのである。(敬称略)

2008年2月 7日 (木)

引き分け?ヒラリー惨敗...

このところ大統領選挙の話ばかりで恐縮だが、しばらくこのテーマでおつきあい願いたい。

メガチューズデーでもっとも注目されたオバマとヒラリーの戦いは、数字だけでみれば引き分けである。だが、ヒラリー陣営にとっては「惨敗」以外のなにものでもない。1週間前、陣営はイリノイ州とジョージア州、アイダホ州こそオバマに譲るが、他州はものにできると踏んでいた。私も同じ予想だった。

悪くとも22州のうち15州で勝てると思っていたはずだ。ところが10州にも及ばなかった。オバマが巻き起こした風はいまや疾風となり、竜巻にまだ成長するかにみえる。その風に押されたヒラリーは、ニューヨークでのスピーチでいくぶんか硬い表情で登場し、あらためてオバマを推す有権者の幅の広さを思い知ったはずだ。

ただ、二人が獲得した一般投票数を眺めると、それぞれ約730万票で互角である。エドワーズが選挙戦から降りたことで、リベラル票がオバマに流れたことも影響している。

しかし、今年になってからのカネの集まり方はオバマがほぼ2対1でヒラリーをリードしている。昨年は、ヒラリーの方がオバマより15億円ほど多く集金したが、1月、オバマ陣営は3200万ドルを集金。ヒラリー陣営は1400万ドルにとどまった。

この現象は拙著『大統領はカネで買えるか』を書いた時点では読めなかった。だが本のテーマどおり、カネが集まる候補がほとんどの選挙で優位に立つため、現時点ではオバマ有利に動いている。

オバマは2月も3000万ドルレベルの集金額を見込んでいる。カネ集めですでにヒラリーは負けである。正比例はしないが、「カネと票」は強い相関関係がある。ヒラリー陣営はこれから遊説と同時に選挙資金の集金にもさらなる努力が必要だ。

それでも選挙戦は間違いなく長期戦になる。5月になっても決まらない可能性が高い。ヒラリーの希望は、不利といわれたカリフォルニア州を圧勝した選対の組織力である。投票前日、オバマ有利といわれたカリフォルニア州を見事に圧勝する。

接戦州で何もせずに勝てるほど選挙はあまくない。同州でヒラリー陣営がどれほどのカネと人材をつぎ込んだか、ご想像いただけるだろうか。地を這うようなキャンペーンなくして52%対42%という数字はない。

面白い戦いになるのはこれからである。(敬称略)

2008年1月31日 (木)

ジュリアーニ敗退

大統領選挙の予備選が山場にさしかかっている。同時に、連日、日本国内のさまざまなメディアからコメントを求められたり映像への出演を依頼されている。いちおう大統領選挙をライフワークと公言している以上、少しでも情報発信と分析のお役に立てればと思い、できるだけ協力している。

まず、一つ謝らなくてはいけないことがある。それは1月に出した拙著『大統領はカネで買えるか?』(角川SSC新書)で、ジュリアーニが共和党の最有力候補と書いたことだ。ご存知のように、ジュリアーニはフロリダ州予備選で大敗したあと、選挙レースから脱落した。

雑誌であればまだしも、書籍でジュリアーニ有利と記したことで、一つの汚点を作ってしまった。昨年11月末までに本稿を書き上げなくてはいかなかった時間差もあるが、私の読みが甘かった。大統領選挙の読みで初めて外した。

なぜ昨年12月まで共和党レースのトップを走っていた男が敗れたのか。昨年末まで、ジュリアーニは共和党の他候補よりもカネを集めていた。特にハッカビーやマッケインと比較すると潤っていた。億万長者のロムニーは個人資産を50億円もつぎ込んでいるので、比較にならないが、ジュリアーニの敗退は過去30年の大統領選挙でも例外的な負け方といってさしつかえない。

なぜか。戦略ミスが大きい。アイオワ党員集会を皮切りに6番目の予備選州まで、「負けてもいいんだ」的な態度でいたのが致命的になった。甘く見過ぎである。さらにフロリダ州の遊説まで、取材記者を移動のバスにさえ同乗させなかった。「秘密主義の男」といわれたジュリアーニは最後まで秘密を守ったまま自らの墓穴を掘って自滅した。

ジュリアーニのウリは、9.11直後の復興プロジェクトの政治力だった。しかし、ブッシュの右腕といわれた選挙のプロ、カール・ローブは「ひとつのプラス要素だけで選挙戦を戦い抜くことは無理がある。有権者を惹きつけるためにはいくつもの要素が必要」と書いている。その通りである。

その点、ヒラリーの強さは複合的である。私は2月5日、22州で同時予備選が行われる「メガチューズデー」でヒラリーが圧勝すると踏んでいる。20州近くをものにするかもしれない。ヒスパニックからの支持、女性票の掘り起こしの成功、組合や低所得者層からの根強い支援、中高年からの厚い支持。個人的にはクリントン家とブッシュ家にはもうホワイトハウスに入ってほしくないが、オバマは苦境に立たされている。

いまは共和党がマッケインになるのかロムニーでくるのかが注目の的である。(敬称略)

2008年1月10日 (木)

ふりだし

ヒラリーが予想どおりニューハンプシャー州予備選で盛り返した。

私は大統領選挙の予想屋ではないが、1月5日付のブログで「私の読みはヒラリーへの順風である」と書いた。オバマがアイオワ州で旋風を巻き起こしたあとに、である。

アメリカ人記者も評論家も誰もヒラリーの盛り返しを期待していなかった。というより、できなかった。ほとんどのメディアはヒラリーよりもオバマに肩入れしているため、ヒラリーが勝つことなど予想だにしなかった。だが、私は彼女の選対の強さとカネの集まりぐあいを知っている。そうやすやすと負ける組織ではない。

けれども、私は個人的にヒラリーのファンであるわけではない。4年前のブッシュ再選の時もそうだった。かなり早い時期から「ブッシュが再選される」と書いていたが、心情的には反ブッシュだった。純粋に誰が勝つかの分析をしているだけである。

1月5日だけでなく、昨年12月7日のブログでも、今年の選挙は最終的にヒラリーとジュリアーニの戦いになると書いた。いまも同じである。自慢になってしまうが、1984年から大統領選挙の予想は外していない。

アメリカにいて、全米でキャンペーンを追っていると見えるものがある。支持率や経済指標といったデータだけでなく、有権者の思いや不満がわかってくる。さらに独特な空気感と呼べるものがフッと目の前にあらわれたりする。

東京にもどったことで空気感が読めないのは事実だが、「かなりいい線」いくのではないかと思っている。オバマ対ロムニーの戦いにでもなったら、私はアメリカに戻った方がいいかもしれない。

ヒラリーがアイオワ州で負けたあと、彼女の選挙対策本部はかなり荒れていたという。これは電話取材で入手した情報だが、彼女の選対委員長であるパティー・ドイルや戦略担当のトップであるマーク・ペン、さらにTV広告担当のマンディ・グランウォルドをクビにするとの話まで飛び出したという。

上記3人はヒラリーの両手と足1本にあたいするくらい重要な参謀である。その3人を切って、別の選挙コンサルタントを雇うというところまでいった。極限に追い込まれた証拠である。ヒラリーの涙はそうした背景があってのことだったのかもしれない。

これでオバマとは1勝1敗である。外野席から眺める者にとってはますます面白い戦いになってきた。(敬称略)

2008年1月 5日 (土)

短絡的なメディア

アメリカ大統領選挙のアイオワ党員集会がおわり、民主党ではオバマが、共和党ではハッカビーが首位を奪った。

多くのメディアは勢いに乗ったオバマに注目し、「オバマが大統領か」といったトーンの報道をしている。これはアメリカのメディアに見られる報道姿勢なので、日本の新聞・テレビも同じ流れである。

だが少し待っていただきたい。内外の報道を散見するかぎり、多くの記者は選挙の全体像を見失っているように思える。確かにオバマは有権者の心を掌握したメッセージを送った。それは昨年11月12日にアイオワ州デモインでおこなわれた集金パーティーの劇的ともいえるスピーチに表れていた。ヒラリーにはない「強さ」がそこにある。

けれども、オバマが首位を奪っても、それはアイオワ州だけのことでしかない。しかも大統領選挙システムはアイオワ州のすべての代議員をオバマに与えない。15%以上の得票率がある候補には均等に代議員が割り振られる。だからヒラリーもエドワーズも代議員を獲得している。

ヒラリー陣営のカネの力と組織力がそう簡単につぶれるとは考えにくい。アイオワで首位にきても、その後負けた候補は何人もいる。1988年のドールがそうだ。88年というのはパパブッシュが大統領になった年である。ドールのアイオワでの得票率は37%。くしくもオバマと同じだ。パパブッシュは19%だったが、ひっくりかえされる。民主党では88年のゲッパートや92年のハーキンがアイオワで首位を奪ったが、いずれも後に敗退した。

私は党員集会(コーカス)という会合スタイルで決めていくアイオワの選挙よりも、一般投票形式をとるニューハンプシャーの予備選(8日)の結果に注目している。ここで仮にオバマがヒラリーに10%以上の差をつけて勝ったとしたら、本当のバンドワゴン(勝ち馬に乗る)現象が全米を駆け巡る可能性がでてくる。

ただ私の読みはヒラリーへの順風である。それは92年に夫ビル・クリントンが「カムバックキッド」と自身を形容した底に渦巻く力である。当時、ビルはアイオワでたった3%の得票率だった。ニューハンプシャーでもソンガスに負けて2位。それでも大統領に当選する。

現在でもヒラリーはニューヨークやカリフォルニアといった大州で、オバマに約20ポイントの支持率の差をつけている。予備選というのは代議員数の獲得競争である。小さな州を10州失っても、大州で大勝すればいいのである。オバマにヒラリーを突き放す力があれば、ホワイトハウスは現実のものとなるかもしれない。(敬称略)

2007年12月 7日 (金)

波乱のない選挙

アメリカ大統領選挙の最初の予備選が近づいている。来年1月3日がアイオワ州党員集会だ。

現在、民主党ではヒラリー・クリントンがリードを続けている。これは全米レベルの支持率という意味で、USAトゥデイとギャロップによる共同世論調査によると39%でトップ。2位はバラック・オバマで24%。同じ時期のロサンゼルス・タイムズとブルームバーグの調査ではヒラリーが45%、オバマは21%だ。

共和党はジュリーニが25%(USAトゥデイ・ギャロップ)でトップ。2位はマイク・ハカビーの16%。トンプソンは15%、マケインも15%。ロムニーは12%と激戦である。

アイオワ州だけをみると、民主党はヒラリーとオバマ、エドワーズが三つ巴の戦いを演じている。共和党ではロムニーがずっとトップを走ってきたが、ハカビーが抜いて頭一つリードした。ジュリアーニはアイオワを捨てているので支持率では3位に甘んじている。

選挙の予測に熱をあげても大きな意味はないが、「どうなるのか」と聞かれる方が多いので、私は「順当にヒラリーとジュリアーニが勝ち進む」とお答えしている。

来年1月に大統領選についての本(角川SSC新書)を出させていただく。そこでもヒラリーとジュリアーニに焦点を絞ってある。04年の本では「選挙対策本部の動き」に光を当てたが、今回は「カネの流れ」に力点を置いた。カネの流れから選挙を眺めた本である。

来年の予備選で二人が脱落してしまうと、本の存在、ひいてはジャーナリストとしての立場も否定されかねないので多少の冒険ではあった。だが、いくつかの理由から二人が両党の正式候補になるだろうと踏んでいる。それもあと2カ月(2月5日のメガチューズデー)で決まってしまう。

最大の理由はカネである。歴史が教えるとおり、本選挙の1年前にもっともカネを集めた候補がこれまで両党の正式候補になってきた。88年のブッシュ(父)とデュカキス、92年のブッシュ(父)とクリントン、96年クリントンとドール、2000年ブッシュとゴアといった具合で、まさに「カネで大統領を買う」というワシントンで使われる言葉がそのまま現実になっている。

さらに両党で、「誰が大統領にもっともふさわしいか」と有権者に問うと、やはりヒラリーとジュリアーニがトップにくる。ヒラリーについては有権者の中で好き嫌いが激しいし、一方のジュリアーニは南部と中西部のキリスト教右派に推されるかという疑問もある。だが、「他候補よりはマシ」という論理が生きている。

急進している前アーカンソー州知事のハカビーが旋風を起こしている。けれどもカネが集まっていない。アイオワとニューハンプシャー両州のあと、どうにもならないといった状態がいまのハカビーである。カリフォルニア州やニューヨーク州といった大州ではジュリアーニの圧勝とみる。まだ理由はあるが、それは拙著に譲りたい。

08年大統領選挙は面白みにかけるくらい順当にヒラリーとジュリアーニが勝ち進むと思われる。2月5日に両候補が正式候補に決まれば、夏の党大会までは「もり下がり」の時期がくる。

外野席に座る人間としては波乱があった方が興味深いし、強力な第3の候補の登場を願ってもいるが、今回の選挙はこのままいきそうである。つまらないといってはいけないが。(敬称略)

2007年6月 5日 (火)

ヒラリーへの不満

またまた大統領選挙の話で申し訳ないが、5月4日、東部ニューハンプシャー州で民主党候補8人による討論会が開かれた。

本選挙の投票日は来年11月なので1年5ヵ月も先だが、すでに2回目の討論会を行った。討論会翌日、ヒラリーの選挙対策委員会委員長のパティ・ドイルからまたEメールがきて、ヒラリーのすごさは討論会でよく示されたと思うと言ってきた。

その数日前には、夫であるビル・クリントンからサイン入りのEメールがきて、「ぜひ日曜夜7時にCNNにチャンネルを合わせて、私の知るヒラリーの本当の姿を見てください。彼女がこの国を改革し、リードしていくアイデアと経験にあふれた候補であることがわかると思います」とベタ褒めである。ビルはまたホワイトハウスで寝起きしたいという欲望があるように思えるほどである。

以前にも書いたが、私は直接ビルとドイルを知るわけではない。ヒラリーのメールリストに名前が登録されているので送られてくるだけだ。ワシントンからの土産のようなものである。

ヒラリーが支持率で先頭を走ることは誰もが知る。黒人候補のオバマよりも、ルックスがいい前上院議員のエドワードよりも確実に民主党の推薦候補になる可能性が高い。

争点はイラクで、3人ともイラク戦争を終わらせるべきだという点では一致しているが、いつから米軍を撤退させるかで意見が割れている。先頭ランナーのヒラリーは戦争を終わらせたあと、どうするかに言及していない。今回の討論会でもそのあたりの踏み込みが足りない。リーダー的な存在であるだけに、国民を納得させられるだけの話の内容は必須である。

終わらせようとの思いはアメリカ国民だけでなく、世界的な願いである。米軍を撤退させるだけで終わりとするのか、その先を見据えた具体的な妙案があるのか、そのあたりは見えていない。

ドイルに確認のEメールを送っているが、返事はまだない。(敬称略)

2007年5月 1日 (火)

ヒラリーとオバマ

「これだけは外せない」というものを、多くの方が持っている。わたしにとって外せないものはアメリカ大統領選である。ライフワークとさえ言えるので、その動向はどうしても気になる。

東京にもどったので候補の遊説を直接取材することはかなわないが、いまはインターネットの「YouTube(ユーチューブ)」で遊説の様子を観られるから、その場の雰囲気はずいぶんと伝わる。

もちろん現場の臨場感や舞台裏でのスタッフの動き、有権者の反応などを直接取材できない歯がゆさは残る。しかし、地球の裏側にいても取材先と連絡を密にとると、ワシントンで取材していたときより数歩遅れをとるくらいの印象である。

2日前も、ヒラリーの選挙対策委員会委員長であるパティー・ドイルからEメールが入り、4月26日にサウスカロライナ州オレンジバーグで行われた民主党候補8人による討論会の模様が伝えられてきた。

ドイルはヒラリーの選挙参謀の中では右腕といえる人物だ。もちろんヒラリーのマイナス点を口にすることはないので、討論会でのヒラリーが「オバマを含めた誰よりも政治家としての強さが光っていた」と褒めちぎる。

オバマが支持率でも選挙資金額でもヒラリーのすぐ後ろにピタリとつけてくる脅威を感じているだろうが、認めようとしない。特にメディアの前では強気一点張りである。選挙で弱みを見せることは許されないのだ。

一般的に、候補自身や関係者は支持者にしか囲まれていないので、全体像を見失いないがちになる。そのため落選した時のショックは大きいし、どうして票が伸びないのか理解できなかったりする。外にいる人間であれば、説明する必要がないと思えるほど落選の理由がわかっていても、本人はいたって本気である。今回の選挙でいえば、バイデンやリチャードソンには勝ち目はない。しかし本人は真剣である。

2008年大統領選挙の争点はイラク戦争に集約される。先日インタビューしたワシントン・ポスト紙の記者、ボブ・ウッドワード(文藝春秋5月号参照)も「1にイラク、2にイラク、3にイラク」と話していた。ただ、ヒラリーにしてもオバマにしても米軍がイラクから撤退するだけでイラクに和平が訪れるとは思っていない。

問題は米軍を退かせたあとにいったいどれだけの安定化策を施せるかにかかっている。だがそこまで踏み込んで具体的な話をしている候補はまだいない。

今度、ドイルにはそのあたりのことを問い詰めてみようと思っている。(敬称略)